グラフからも分かるように、男性の就業者数はほぼ横ばいです。
対して女性の就業者数は、東日本大震災・新型コロナウイルスの蔓延などの年を除き、右肩上がりに増えています。
2011年 | 2016年 | 2021年 | |
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15歳〜24歳 | 40.2% | 42.9% | 47.8% |
25歳〜34歳 | 68.3% | 73.9% | 80.5% |
35歳〜44歳 | 65.9% | 71.8% | 77.0% |
45歳〜54歳 | 71.6% | 76.0% | 78.7% |
55歳〜59歳 | 62.1% | 69.3% | 73.0% |
60歳〜64歳 | 44.2% | 50.8% | 60.6% |
65歳〜69歳 | 27.1% | 33.3% | 40.9% |
70歳〜74歳 | 16.6% | 18.8% | 25.1% |
75歳以上 | 5.2% | 5.6% | 7.0% |
どの年代も増加しているものの、中でもとくに増加率が高いのが25歳~44歳の子育て世代と、55歳以上の定年前後の世代。
いずれも10年間で10ポイント以上増加しています。
その理由を考えてみましょう。
近年産休取得をして、産休明けからすぐに働き始める方が増えています。
以下の図を見て分かるように、女性の労働力曲線は長年大きなM字を描いていました。
Mのくぼんだ部分は、25歳~44歳の結婚・育児をする世代です。
しかし近年、そのM字のくぼみが、ゆるくなってきています。
25歳から44歳の労働力が増加している理由は、「未婚率の増加」と「出産後早い段階で仕事復帰する女性の増加」が考えられます。
これまでは産休を取得するのは女性のみでした。
しかし、ここ数年は男性でも育休取得する方が増加しています。
また保育の受け皿拡大や時短勤務など、女性が復帰しやすい環境も少しずつ整い始めています。
これらが、産後女性の仕事復帰を後押ししている理由として考えられそうです。
もうひとつの理由が、高齢者の就業者数増加です。
多くの会社では60歳・65歳が定年ですが、女性の平均寿命は87歳を超えています。
つまり60代は、まだまだ健康に仕事ができる年代。
定年後20年以上も余暇があることを考えると、金銭的な不安をもつ方や健康維持のために働きたいという方が仕事を続けるのは自然な流れです。
人材確保に苦労している企業側も、仕事に慣れた人材を継続して雇用できるメリットがあります。
国としても70歳まで就業機会を確保することや、定年制の廃止などの高齢者就業確保措置を盛り込んだ「高年齢者雇用安定法」の改正を行うことで、高齢者の就業を後押ししています。
とはいえ日本は海外に比べ、女性管理職の割合が圧倒的に少ない国です。
これは、日本国内の働き方が海外に比べ多様化していないことが原因と考えられています。
正社員として毎日会社に通うのは、子育てや介護をしている女性にとって非常に困難です。
テレワークや時短勤務など、ある程度自由な働き方をしてしまうと、出世しにくいもの。
自分自身はキャリアアップに興味があっても、家庭的な理由からあきらめてしまう女性は少なくありません。
仕事をしていくうえで、ジェンダーギャップを感じたことのある女性は少なくないはずです。
女性管理職が少ないのも、ジェンダーギャップのひとつといえます。
ほかにも女性が仕事をするうえで、以下のような問題が挙げられます。
・お茶出しをさせられる
・セクハラを受ける
・責任のある仕事を任せてもらえない
・給与が安い
「お茶出しは女性の仕事」「結婚して離脱する可能性のある女性に重要な仕事は任せられない」といった考えがいまだに残っていることが分かります。
仕事をするうえでは、「女性であるだけで不利」と感じている女性もいらっしゃるでしょう。
正規雇用で働きたいと思っても、保育園に入園できない・介護で長時間家を空けられないといった問題もあります。
子育て中であることがネックで、なかなか正社員として採用してもらえないことも考えられます。
結婚後、転勤の多いパートナーについていくために、正社員で働けないという方もいらっしゃるでしょう。
このように自分ではどうしようもない問題で、希望の働き方ができない女性も多くいらっしゃいます。
たとえ順調にキャリアの道を歩んでいたとしても、妊娠・出産によってその道を閉ざされてしまう方もいらっしゃいます。
結婚後、子どもも欲しいけれどキャリアも諦めたくないと悩む方も。
どちらか選んだとしても、将来的に後悔しないかどうかさえも不安に感じています。
これらの悩みをもつ方が増えたのは、女性の生き方が多様化する中、周りがその流れに追いついていないことに問題があります。
ではこの実情をどうすれば、改善できるのでしょうか?
居心地のよい職場なら、退職や非正規雇用を考える前に会社のシステムを変更できないか考えてみましょう。
まずは、信頼できる上司に現状を理解してもらうことが重要です。
あなた以外にも、同じような悩みをもつ方が多ければ、改善してもらえる可能性は十分あります。
会社のシステムが変われば、周囲からの協力も得やすくなるでしょう。
改善点としては、次のようなことが考えられます。
育児や介護などワークライフバランスがとりにくい場合は、時短勤務や在宅ワーク・コアタイム制の導入などが考えられます。
人材不足もあり、会社としては仕事ができる社員には残ってほしいもの。
柔軟な働き方ができるようになれば、男女問わず会社に対する満足度も上がります。
会社・社員双方でWINWINな解決策になるでしょう。
令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、令和4年4月1日から段階的に施行されています。
現行の育休制度に加え、「子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得可能」な男性版育休の取得が可能になることなどが追加されました。
法に反した事業主に対しては、行政から報告を求められることや、助言・指導・勧告を受ける可能性もあります。
報告を怠った場合や虚偽の報告をした場合は、企業名の公表や20万円以下の過料に処されることも。
ただし、制度があるだけで取得率は向上しません。
社内でも取得しやすい環境づくりが必要になります。
社内で育休制度の周知や、育休中・復職後のサポートを充実させるといった対策が求められます。
最後は、部署の異動や役職の変化によって希望の働き方を実現する方法です。
現在の仕事が、お客様と接することが多く自分の都合で勤務時間を決められない営業職であれば、内勤で在宅や時短勤務をしやすい部署に異動の希望を出すなどが考えられます。
同じ会社であれば、身についた知識をいかすこともできますし、新たな部署でスキルアップもできるでしょう。
また全国転勤の可能性がある総合職から、転勤なしの地域限定職へ変えてもらう方法もあります。
会社に働きかけたところで、絶対無理!という方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、転職も検討してみてはいかがでしょうか?
ただし、転職先はどこでもよいわけではありません。
自分の求める働き方のできる会社を見つける必要があります。
働く女性にとってよい環境を見つけるポイントを確認してみましょう。
ロールモデルとなるような女性が働いている会社を探しましょう。
育児や介護をしながら仕事をしている女性・お子さんのいる管理職の女性がいれば、同じような流れでワークライフバランスをとれることが期待できます。
また男性で長期の育児休暇を取得した方がいる会社も、社員の生活をバックアップする意思があることが分かります。
産前産後や介護などを優先して働きたい場合でも、働き方を選べる会社なら勤務を続けられます。
時短勤務ができる会社や、子どもの体調が悪い日には、在宅ワークに切り替えられる会社なら、通常勤務よりも気兼ねなく業務を行えるでしょう。
自由な勤務が認められ、フォロー体制も整っている会社は、社員の満足度も高く働きやすい会社といえます。