寿退社が当たり前だった時代は過ぎ、結婚後も仕事を続ける女性が増えています。
それにともない、中には知識を身につけ専門職としてキャリアアップする方や、管理職として大勢の部下を束ねる方など、多くの女性が多方面で活躍しています。
その結果、少しずつではありますが、女性の管理職の割合も増加してきました。
以下のグラフを見ると、着実に増えていることが分かります。
しかしこの数字は、国の目標や国際水準には程遠いもの。
女性のキャリアアップのしやすさは、まだまだ男性にはおよびません。
その理由として考えられるのが、女性のキャリアアップに対する周囲の考え方が、いまだに昔のままだというものです。
実はキャリア形成における男女差は、入社時から始まっているという見方があります。
上司の指示内容が男女で異なり、その結果、結婚前の時点ですでに男女格差ができているのです。
これは上司の中に、「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)」があることが原因と考えられます。
つまり
「管理職を目指す女性はそれほど多くない」
「出産後は子育て中心の生活を望んでいる」
といった偏った考えから、男性と比べ女性には最初から難易度の低い仕事や補佐的役割を与えてしまっているのです。
上記の図からも分かるように、減ってきてはいるものの、今でも女性は「結婚後は家に入るべき」「子どもが大きくなるまでは仕事を休むべき」と考えている方がいることが分かります。
こういった考えの方がいるからこそ、女性のキャリアアップに関する問題点がなくなりません。
働く女性の多くは、仕事をする上でジェンダーギャップを感じた経験があるのではないでしょうか。
ギャップを感じる内容としては、
・同じ仕事をしても男性の方が評価される
・お茶出しをさせられる
・給与が上がりにくい
・補助的業務ばかりさせられる
・なかなか昇進できない
といったことが挙げられます。
とくに昔は、こういった風潮が強いものでした。
しかし役職に就く女性の割合などから見ても、いまだに女性差別が続いていることが分かります。
結婚後「出産・育児」を経験する女性は、その時期にキャリアアップしにくいことが、もう一つの問題です。
男女の総合職で、子どもが生まれる前と後の働き方の変化を比較した図を見てみましょう。
明らかに女性の方が、これまでよりも仕事をセーブするようになっていることが分かります。
保育園の送り迎えや、子どもの発熱での急なお迎えなど、多くの家庭では女性がその役割を担っています。
その結果、マミートラックに陥る女性が多く存在するのです。
マミートラックとは、産休・育休から復帰したものの、代わりのいる仕事や責任の軽い仕事をさせられ、出世コースを外れてしまうことを指します。
上記の図を見ると、半数近くの女性がマミートラックに陥っていることが分かります。
総合職の女性についても、およそ40%の方はキャリアの展望を感じていません。
マミートラックは、一度入ってしまうと、なかなか抜け出せません。
結果、仕事に対するモチベーションの低下、ひどい場合は退職といった問題に発展することもあります。
一つ目の方法は、会社の仕組みを変える方法です。
そもそも日本では、国を挙げて女性が活躍できる社会の実現を目指しています。
その代表例が「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」つまり「女性活躍推進法」です。
常時雇用の労働者が101人以上(2022年4月改定)の企業では、女性の就労に関しさまざまな企業努力を義務付けられています。
その流れに乗って会社の仕組みを変えていければ、男女の格差を埋められるかもしれません。
まずは、直属の上司に相談してみましょう。
会社の体質で変えてほしいところを申告します。
自分自身の問題だけでなく、今後どの女性に対してもキャリアアップを妨げない仕組みづくりを提案しましょう。
<男女格差をなくす提案一例>
・仕事におけるジェンダー平等
・男性の育児休業取得促進
・女性の管理職増加
・社内評価基準の見直し
・管理職のアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)を認識するための研修実施 など
男女間の格差をなくし女性も活躍できる企業になることは、女性にとってプラスなだけでなく、社内全体の競争意識も高まり好影響を与えるはずです。
もしも上司がその点に問題を感じている方なら、話を聞いてもらえるでしょう。
小さな一歩が、大きな一歩につながることもあります。
どんなに頑張っても、会社の体質は変わらないと悩む方もいるでしょう。
その場合は、会社以外が変わるしかありません。
頼る相手を会社ではなく、パートナーやシッターなどに変えます。
また、自分自身が変わる方法もあります。
本来夫婦は、結婚の時点でお互いのライフプランをすり合わせ、妊娠・出産・子育てをどのように乗り越えていくのか相談するべきです。
しかし日々の忙しさでなかなか、夫婦の話し合いの場を持てなかったという方もいらっしゃるでしょう。
自分自身が今後どうしていくかは、結婚しているのであれば、自分勝手に決めることはできません。
パートナーと、今後どうしていきたいのか相談の場を設けましょう。
たとえば子育てをしながらお互いキャリアアップを目指すとしても、同時に仕事に対して100%全力を出すことはできません。
どちらかが頑張り時であれば、もう一人はサポートにまわり、無理なキャリアアップを避ける。
時期が来たら、交代…といった形で、協力し合うのが理想です。
また家事や育児の役割分担についても、誰が何をするのか明確にし、自分だけに負担がかかるのを避けましょう。
本来夫婦は、結婚の子育て中でも自身がキャリアアップを目指すなら、出産以前の働き方に戻す考え方もあります。
「残業ができない人材は出世しにくい」という現状を変えられないのであれば、残業をやめて定時で帰っていたものを、出産前の状態に戻すのです。
ここで問題になるのは子育て。
保育園のお迎えも任せられるシッターさんを雇う方法や、パートナーにもお迎えを頼むといった方法で乗り越えていきます。
もしも子どもが体調不良になってしまった場合は、病児保育という強い味方もいます。
自分ばかりが無理をするのではなく、他者と役割分担することで、少しでも負担が少なくなるように努めましょう。
逆に「子どもとの時間を大切にする」という結論を出す方もいるでしょう。
その場合は、職場を変えるという方法が考えられます。
子育て中の女性が多い職場は「お互い様」の気持ちがあるため、仕事をしやすい環境が整っています。
また、子どもが小さいうちは時短勤務ができる企業も増えてきました。
時短勤務ができる子どもの年齢も徐々に上がってきており、子どもが小学校にあがっても時短勤務ができる企業もあります。
ただし時短勤務の期間は、キャリアアップの面ではどうしても不利になります。
これは、現在進行形で考えていかなければならない新たな課題です。
今後、女性のキャリア形成の悩みが解決することで、女性はより活躍の場が増えていくでしょう。
これまでは、ただがむしゃらに深夜残業や休日出勤をして、よい成績を上げ、キャリアアップしていました。
しかし今は、終身雇用の考えも薄れ、ワークライフバランスを考えながらキャリアアップしていく時代に変わってきています。
ただし前述のように、キャリアアップの実現は、女性だけが頑張ればどうにかなる問題ではありません。
会社や家族など、周囲の協力が不可欠です。
話し合いを重ね、自分ばかりでなく周りにもメリットのある仕組みづくりができれば、女性のキャリアアップも叶うでしょう。
コロナ禍によるテレワークの増加などで、働き方の選択肢は着実に増えつつあります。
通勤の必要のないテレワークや、会社に所属せず、自身の専門性を武器に働くフリーランス。
在宅でできるこれらの働き方が浸透することで、育児中の女性でもキャリアアップしやすくなります。
資格の取得やセミナーへの参加などで自分自身の視野を広げ、さまざまなキャリアの選択肢を見つけましょう。